インハウスローヤーのネタ帳

弁護士業界動向、インハウス動向、インハウスでのスキルアップ等

【仕事術】弁護士が実践しているケアレスミスの減らし方

弁護士も人間である。ミスを完全になくすことはできない。

しかし、契約書を作成したりレビューするにあたり、記載ミスや確認漏れがあると、場合によっては契約交渉自体にも影響を与えかねない。

また、せっかく専門知識を磨いても、ケアレスミスがあっては、専門知識を正しく契約書に反映することができない。

さらに、時には「ちょっとしたケアレスミス」が、作成・レビューした契約書全体の信頼を損ねてしまうことさえある(そのようなミスは、主観的には「ちょっとしたケアレスミス」であっても、客観的には重大なミスと言えよう)。

そこで、基本的なことではあるが、自戒をこめて、いかにしてケアレスミスをなくすか、ということについて考えてみたい。なお、ここでケアレスミスとは、誤字・脱字、数字や表現の誤記、記載すべき事項の記載漏れ、内部コメントの消し忘れ、バージョン管理ミス(たとえば、最新版ではなく一つ前の版にコメントをいれてしまう等)等の、いわゆる形式ミスを言う。

対策①

自分で見直しをする。

当たり前のことであるが、一度最後まで作成・レビューをした後、ケアレスミスがないか、見直す必要がある。心構えとしては、ケアレスミスがないか見直すというより、必ずあるという前提で、それを発見するつもりで見直すとよいだろう。

自分がよく間違う事項のチェックリストを作っておき、それを横に置きながら見直す癖をつけると、有用と思われる。イチロー選手がバッターボックスで行う一連の動作や五郎丸選手の指立てポーズのように、ルーティーン化すると良いのではないか。ボールを蹴る(プロダクトを世に出す)前に行う一連の動作を決めておくことで、成功の確率を上げるのである。

なお、報道によれば、五郎丸選手の指立てポーズを含む一連のルーティーンは、「4年かけて作り上げた」ものだそうである(五郎丸歩 あのポーズの秘密を告白)。弁護士としても、日々チェックリストをブラッシュアップし、自分にとってベストなルーティーンを練り上げたいところである。

筆者個人のチェックリストは、折をみて公開したい。

対策②

他人にダブルチェックしてもらう。

どんなにハイレベルな人でも、必ず、ミスは生じる。ミスは生じるものという前提で、時間が許す限り、他人にダブルチェックをしてもらうことが有用である。特に、人間の思い込みというのは案外強力で、何度自分で見直したつもりでも、間違いをスルーしてしまうことがある。どこで読んだか忘れたが、脳が大量に入ってくる情報の処理を効率化するため、一定のフィルター(つまり思い込み)をかけている、等という説もあるようだ。

第三者の眼からチェックすると、こういった思い込みによるミスを発見することができる場合がある。対策④ともつながるが、ダブルチェックができるだけの時間を確保することも重要であろう。

対策③

プリントアウトして見直す。

パソコンのモニター上では発見できなかったミスを、プリントアウトするとなぜか発見できる場合が多々ある。

対策④

十分に時間を取る。

焦りは間違いの元。なかなか実務において契約書作成・レビューに十二分に時間を取ることは難しい場合も多いが、間違ってから直す手間を考えれば、最初に充分時間を取って作業したことが結局は時間の節約になる場合が多い、ということを依頼者(社外であれ社内であれ)に説明して理解してもらう、というのも弁護士のスキルの一つであろう。また、依頼者が理解のある人物であるとしても、そもそもこちらが作業見込みを伝える際に、充分なリードタイムを取れるよう、見込時間の読みをなるべく正確にすることも大切だ。他の作業との優先順位をきちんとつけて段取りよく進めることも重要であるし、予想外の事情で作業に遅れが生じそうな場合には、はやめはやめに相談して調整する必要がある。これをしないと、焦ってミスが生じる。

対策⑤

よく寝る。

睡眠不足はケアレスミスの最大の供給源である。同様に、食べ過ぎ(→眠くなる)やストレスもケアレスミスの元となるので馬鹿にできない。よく寝て適度に美味しいものを食べハッピーに過ごすことがケアレスミス軽減につながるのである。なお、ケアレスミス軽減が、ストレス軽減につながり、これがケアレスミス軽減につながるという良いサイクルも期待できる。

対策⑥

五感を使う。

指差確認、声出し確認等、五感をフル活用することで、意外なミスに気付くことができる場合がある。

対策⑦

経験を積む。

どれだけベストを尽くしても、ミスる時はミスる。

ある程度割り切って、ストレスを溜めないようにしつつ、次に同じミスをしないよう対策を立てて実践することが大切だ。

 

以上、つらつら思いついたままに述べた。

なお、こんな記事を書こうと思い立ったのは、最近自分がケアレスミスをしてしまったからである。

ざんねん!